Alone in the lake.【Cackling Goose】

最近になって知ったが、どうも雁という鳥は、大型のカモのことを指す俗称らしい。
簡単に言うと、「鴨より大きくて、白鳥より小さい水鳥は全部まとめて雁でいいじゃん」ということである。

若い頃に、多少なりとも野鳥を覚えた事のある僕には、このまとめ方は目から鱗の事実で衝撃だった。
山や湖で野鳥を見かければ、『あれがヤマガラね。』とか『あー、マガンだね』とか、その特徴で個体を見ていたからだ。

逆に「ガン」というと、子供の頃に見たアニメ「ニルスの不思議な旅」に登場したカナダガン(アッカ隊長)のイメージが定着しており。『雁=カナダガン』というイメージが出来上がってしまっていた。
アニメでもおなじみの通り、カナダガンは渡りをする鳥である。V字編隊で空をゆく美しい様は、本物でなくとも、テレビや何かでも見たことがあるだろう。

きれいで雄大な自然の営みを感じさせてくれる雁の群れには、心が洗われる。
しかし、このカナダガンは実は日本古来の雁ではない。
特定外来生物であり、昨年環境省より国内根絶宣言が出された「日本で最初の特定外来種根絶例」となった生物である。

この愛くるしいカナダガンが何をしたかというと、それは日本古来の雁であり絶滅危惧種「シジュウカラガンとの交雑」である。
シジュウカラガンは、見かけ上は非常にカナダガンと近く素人目には判別できないほど似ている。もともと冬鳥としても少なく越冬地としても東北の仙台ぐらいまでと聞いている。

この日本古来のシジュウカラガンと増殖力の高いカナダガンが交雑により、純粋種が減ってしまうことが懸念されたのである。
カナダガンも渡りをして日本にまでやって来て定着するようになったのならば、「自然の摂理」として、このような扱いを受けなかったかもしれないが、そこにはやっぱり人間の都合(主に観賞用らしい)で連れて来られて、増殖してしまったという「特定外来種」の条件が揃っていた。

「シジュウカラガン」も、人間の都合で持ち込まれたキツネ(当時はキツネの毛皮が重宝された)によって繁殖地が荒らされ一度は姿を消してしまって絶滅したと思われていたのだが、環境省や国際的な保護活動のグループらが、1983年に米国から同種を譲り受け、人工繁殖と放鳥をするなど、保護活動を行い、昨年には、絶滅を逃れる目安である1,000羽が宮城県内に渡ってくるようになった。少数だが千葉県の手賀沼でも観察の記録があり、シジュウカラガンは、ほぼ絶滅を心配するレベルではなくなったのかもしれない。

喜ばしい明るいニュースとなり、関係者はもちろん、多くの人がプラスに受け止めている出来事だ。

しかし、捻れ者である僕には、この前代未聞の偉業も、自然の摂理という概念で考えた時に自然の流れといえるのだろうかと思ってしまう。
歌川広重の「高輪之明月」という絵がある。

ここにある雁は、目の回りに白斑があり、首が黒い。見ようによってはカナダガンのようにも見える。カナダガンの最初の繁殖記録は1985年だから、もしこの絵にかかれている雁が「カナダガン」だったりすると、またまた「自然の掟」に逆らってしまったのかもしれない。

混ざり合うことは、もしかしたら生命が存続することでとても重要なことなのかもしれない。
人の世も同じ。民族や宗教や伝統に縛られて、個を貫いていても、そこにあるのは「希少価値」でしかない。それは「本当の価値」と言えるだろうか?他人を受け入れて、混ざり合うことでこそ明るい未来に辿り着けそうな気もするのだけど。

独りぼっちで寂しいなら、混ざることで生きられることもあると思う。

 

2017-01-01 | Posted in ILLUSTRATIONNo Comments » 

関連記事

Comment





Comment